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排ガス管理

排ガス管理

プラントとは工場・発電所・ごみ処理場など多種多様の機器・装置がいくつも組み合わさり、大きな性能を発揮する機械設備の総称です。プラントは私たちの生活を維持する上で必要不可欠なものです。

一方でプラントの操業に伴い排ガスが発生します。日本では古くから大気汚染が問題となった過去があり大気汚染防止法などの整備が行われ規制されています。

今回はプラントでの排ガス管理について紹介します。

この記事を書いた人:Eikou

排出規制について

大気汚染防止法では様々な汚染物質が規制されています。規制を受けている主な物質の内訳は以下の通りです。

  • ばい煙
  • 揮発性有機化合物(VOC)
  • 粉じん
  • 特定物質(アンモニア、一酸化炭素、メタノール等28物質)
  • 有害大気汚染物質
  • 水銀

 

ばい煙

ばい煙規制法から引き継ぐ形で、大気汚染防止法ではより厳しい規制を設けています。ばい煙とは一般的に工場などで石油などの燃料などを燃焼した際に発生する硫黄酸化物や、ばいじん(すす(煤))や有毒物質を含む煙などをまとめたものになります。
この法律では4つの基準を設けて、ばい煙の排出量を規制しています。
大別すると以下のようになります。

  • 一般排出基準:ばい煙発生施設ごとに国が定める基準
  • 特別排出基準:大気汚染の深刻な地域において、新設されるばい煙発生施設に適用される硫黄酸化物、ばいじんに対しての基準
  • 上乗せ排出基準:一般排出基準、特別排出基準では大気汚染防止が不十分な地域において、都道府県が条例によって定めるより厳しいばいじん、有害物質に関する基準
  • 総量規制基準:上記に挙げる施設ごとの基準のみによっては環境基準の確保が困難な大規模工場に適用される工場ごとの硫黄酸化物および窒素酸化物に関する基準

このように排出基準が設けられ、排出基準には量規制や濃度規制、総量規制の方法があります。

揮発性有機化合物

揮発性有機化合物(VOC)は、液体が気体になりやすい性質である揮発性を持っており、大気中では気体の状態で存在している有機化合物の総称になります。
代表的なものはトルエンやキシレン、酢酸エチルなどがありシンナーなどの塗料溶剤や接着剤などに含まれています。
これらの物質は浮遊粒子状物質(SPM)やオキシダントの生成原因となります。一定の規模以上の施設が「揮発性有機化合物排出施設」として定められており、揮発性有機化合物の排出の規制と事業者が自主的に行う揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制のための取り組みを組み合わせて行われています。

粉じん

粉じんは大気中に浮遊する微細な粒子状の物質の総称であり、物の破砕や堆積などによって発生し、飛散する物質です。
人の健康に被害を生じるおそれがある物質として現在はアスベスト(石綿)を特定粉じんにしており、それ以外の物質を一般粉じんと定め、規制しています。
一般粉じんに係る規制は、破砕機や堆積場などの一般粉じん発生施設ごとに定められた構造や使用、管理に関する基準を設けています。
特定粉じんに係る規制としては、工場や事業場の敷地境界における大気中濃度の基準、そして吹付け石綿などが使用されている建築物やその他の工作物を解体・改造・補修する作業における作業基準が定められ、厳しく規制されています。

特定物質

特定物質は物の合成や分解、その他化学的処理に伴い発生する物質のうち、人体の健康あるいは生活環境に被害を生ずるおそれがある物質が指定されています。
アンモニア、一酸化炭素、メタノール等、28種類が規制されています。

有害大気汚染物質

有害大気汚染物質は、低濃度であっても継続的に長期間摂取すると人の健康を損なうおそれがある物質であり、大気汚染の原因にもなるものと定義されています。
大気汚染防止法では既に規制対象となっているばい煙と特定粉じんを除外した全248種類の物質が定められており、その中でも健康リスクがある程度高いと考えられている23物質が優先取組物質とされています。
さらにその中から健康に係る被害を防止するため、排出・飛散を早急に抑制しなければいけない物質として、1)ベンゼン、2)トリクロロエチレン、3)テトラクロロエチレンが指定物質と定義されています。

水銀

水銀は大気汚染防止法の一部改定に伴い、追加された規制物質です。水銀排出施設の設置または構造などの変更をする場合、都道府県に届出が必要であり、大気中に排出される排出物に含まれる水銀ごとに排出基準が定められています。

出典:環境省 「大気汚染防止法の概要」

工場における環境管理

国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全するために企業は以下の要素を企業活動の要件として認識し、取り組んでいくことが必要になります。

 全社的な環境管理の取組み 
  1. 経営者が環境管理の重要性を理解し、全社的な環境管理の方針を定める
  2. 経営者は、適切な環境管理を実施するための組織を構築するとともに、環境汚染防止設備を整備する
  3. 全従業員は、環境汚染の発生のリスクを認識し、環境汚染の未然防止を図る
  4. 環境管理上の不適正な事象が発生した場合には、早急に是正措置を講じるとともに、原因を究明し、今後の対処方針を定める
  5. 地方行政部門や地域住民等と日頃から情報及び意見の交換を行い、環境汚染防止活動について認識の共有化を図り、関係者間の信頼関係を構築する

 

ばい煙発生施設設置工場における職務について

公害防止統括者、公害防止主任管理者及び公害防止管理者の職務は法によって定められています。ここでは、ばい煙発生施設設置工場における職務について紹介します。

環境管理責任者の職務 
  1. 環境管理計画の策定
  2. 排ガス処理施設の設置
  3. 上記の適切な運用を行うための人員の配置
  4. 上記に伴う社内規定の制定
  5. 予算の確保
  6. 緊急時等の対策計画の策定

 

排ガス環境管理技術者の職務 
  1. 使用する燃料や原料の点検管理
  2. 燃焼施設及びその他の排ガス排出施設の点検管理
  3. 排ガス処理施設の適切な運転及び維持補修の管理
  4. 排ガスの測定及びその記録の管理
  5. 測定機器の点検及び維持補修の管理
  6. 排ガスの異常排出時における応急措置の実施
  7. 行政機関へのインベントリなどの報告や立入検査への対応

 

排ガス処理施設運転員の職務 
  1. 排ガス処理施設の適切な運転及び日常点検
  2. 排ガスの測定及び結果の記録
  3. 測定機器の日常点検及び調整
  4. 排ガスの異常排出時における環境管理技術者への報告

 

 

公害防止管理者制度について

1971 年の産業構造審議会の答申に基づき制定された法律において、適用を受ける対象工場(特定工場)は、公害防止管理者、公害防止主任管理者及び公害防止統括者から構成される公害防止組織を設置することにより公害防止組織の整備を図り、公害防止に資することが義務付けられた。
この法律における特定工場とは、日本の標準産業分類における製造業、電気供給業、ガス供給業及び熱供給業のいずれかの業種に属している工場で、公害の主な発生源として考えられている一定の規模以上のばい煙発生施設、汚水排出施設、騒音・振動発生施設、ダイオキシン発生施設などを設置している工場である。また、公害防止統括者は公害防止に必要な業務を統括管理する者、公害防止主任管理者は公害防止管理者を指揮するとともに技術的事項について公害防止統括者を補佐する者、公害防止管理者は公害防止に関する技術的業務を管理する者である。また、これらの工場の従業員は、公害防止統括者、公害防止主任管理者や公害防止管理者が職務上必要な指示に従わなければならない。

出典:環境省 「工業排ガス管理のための 指導マニュアル(184頁)」

 

 

1) 特定工場について

特定工場とは、製造業(物品の加工業を含む。)、電気供給業、ガス供給業及び熱供給業のいずれかに属している工場で、一定の規模のばい煙発生施設、汚水排出施設、騒音・振動発生施設、ダイオキシン発生施設などを設置している工場になります。

ばい煙発生施設又は汚水排出施設を保有している特定工場は、排出ガス量又は排出水量の規模と大気汚染防止法及び水質汚濁防止法で規定されている有害物質を発生又は排出する施設の有無によって区分されます。有害物質を発生又は排出する施設を設置している工場は、規模の大小にかかわらず特定工場とされます。

排出ガス量排出水量
大規模特定工場40,000 Nm3/h 以上10,000 m3/日 以上
小規模特定工場40,000 Nm3/h 未満10,000 m3/日 未満

2) 公害防止管理者等の区分

公害防止管理者は、対象とする排出物等の種類によって、大気関係、一般粉じん関係、特定粉じん関係、水質関係、騒音・振動関係、ダイオキシン類関係、公害防止主任管理者に区分されます。大気関係及び水質関係公害防止管理者は、工場の規模及び有害物質発生・排出施設の有無によって、それぞれ、4 種類に区分され、合計 13 の種類に区分されています。

大規模特定工場小規模特定工場
有害物質発生施設:あり第1種公害防止管理者第2種公害防止管理者
有害物質発生施設:なし第3種公害防止管理者第4種公害防止管理者

3) 公害防止管理者等の職務

公害防止統括者、公害防止主任管理者及び公害防止管理者の職務は法によって定められています。ここでは、ばい煙発生施設設置工場における職務について紹介します。

公害防止統括者の職務 
  1. 公害防止に必要な業務が適切に実施されるように措置を講じ、その実施状況の監督
  2. ばい煙発生施設の使用方法の監視やばい煙処理施設等の維持・管理、排出ガスの測定・記録の管理、事故及び緊急時の措置の管理

 

大気関係公害防止管理者の職務 
  1. 使用する燃料又は原材料の検査
  2. ばい煙発生施設の点検
  3. ばい煙量又はばい煙濃度の測定の実施及びその結果の記録
  4. 測定機器の点検及び補修
  5. 特定施設等の事故時の応急措置の実施
  6. 緊急時の応急措置の実施
  7. ばい煙量又はばい煙濃度の減少・ばい煙発生施設の使用制限その他の措置を実施

 

公害防止主任管理者の職務
  1. 大気及び水質の両方に係る公害防止管理者を指揮監督
  2. 公害防止統括者を補佐

 

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