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熱中症対策

熱中症

温暖化により年々暑さが厳しくなってきています。熱中症のリスクも高まっています。自分自身は当然として、同僚・部下が安全に作業できる環境を整えることも重要です。

今回は熱中症について解説します。

この記事を書いた人:Eikou

2020年(令和2年)の熱中症搬送・死亡者数

全国での6~9月の熱中症での搬送者数は64,869人(前年比▲2,000人)
死亡者数は112人(前年比▲6人)

気温が上昇し、暑さに順化できていない7月上旬、連休(お盆)の涼しい環境に慣れた8月中旬頃に熱中症のリスクが高まります。

出典:総務省

熱中症のリスク

2009から2020年までの熱中症による死傷者数の推移を以下に示します。
出典:厚生労働省2020年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
死傷者数は増加傾向となっています。
次に2016から2020年までの熱中症による時間帯別の死傷者数を示します。
出典:厚生労働省2020年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
熱中症のリスクが高い時間帯は日中よりも夕方になります。
続いて、2010から2013年までの熱中症死亡災害の作業開始日数別の発生状況を示します。
出典:製造業向け熱中症予防対策のためのリスクアセスメントマニュアル
体が暑さに順化できていない初日に熱中症死亡災害が最も高く、初日から3日目までは特にリスクが高くなっています。



熱中症の予防

熱中症の要望としては、暑さ指数(WBGT値)の把握

暑さ指数(WBGT値)とは

熱中症を予防することを目的として、1954年にアメリカで提案された指標で、世界中で広く活用されています。単位は摂氏(℃)です。熱中症の発症は、気温、湿度、風、日差しなどが関係し、例えば気温が25℃~30℃くらいでも湿度が極端に高い場合に発症することもあります。

暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)は気温、湿度、日射・輻射熱の3要素を取り入れ、『蒸し暑さ』を1つの単位で総合的に表しています。人体と外気との熱収支(熱の出入り)に着目し、人が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を行う指標として活用が推進されています。

 

WBGT値の使用方法

WBGT値は、自然湿球温度と黒球温度を測定し、さらに屋外で太陽照射のある場合は、乾球温度を測定し、それぞれの測定値を基に次の式により計算を行います。

※自然湿球温度、黒球温度、乾球温度とは以下のとおりです。
 自然湿球温度  強制通風することなく、輻射(放射)熱を防ぐための球部の囲いをしない環境に置かれた濡れガーゼで覆った温度計が示す値
黒球温度 次の特性を持つ中空黒球の中心に位置する温度計が示す値
(1)直径が150mmであること
(2)平均放射率が0.95(つや消し黒色球)であること
(3)厚さが出来るだけ薄いこと
乾球温度 周囲の通風を妨げない状態で、輻射(放射)熱による影響を受けないように球部を囲って測定された乾球温度計が示す値
■室内及び屋外で太陽照射のない場合(日かげ)
  • WBGT値 = 0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度
■屋外で太陽照射のある場合(日なた)
  • WBGT値 = 0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

職場における熱中症の予防には、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」などに示されている予防対策を徹底して下さい。また、暑さ指数(WBGT)が、作業内容ごとに定められた基準値を越える場合には、次のような対策を講じて下さい。

(熱中症予防対策の例)
  • 作業場所に日よけ、冷房及び大型扇風機などを設置するなどしてWGBT値の低減を図る。
  • 自覚症状の有無に関わらず水分・塩分の作業前後や作業中の定期的な摂取を徹底する。
  • 冷房などを備えた休憩場所、作業場所の近くに氷やシャワーなど身体を適度に冷やすことのできる設備を設ける。
  • 作業の状況などに応じて、休憩時間の確保、連続作業時間の短縮や作業場所の変更を行う。
  • 身体作業強度が高い作業を避ける。
  • 熱への順化の有無が熱中症の発生リスクに大きく影響することから、計画的に熱への順化期間を設ける。(※ 熱順化:暑さに慣れること)
  • 透明性及び通気性の良い服装等を着用する。
  • 作業服の種類により、WBGT値に補正値を加えること(表2参照)
  • 作業を行う際には、熱中症の発症に影響するおそれのある睡眠不足、風邪や下痢などの体調不良、前日の多量飲酒、朝食欠食などに十分留意する。
  • 糖尿病、高血圧、心臓病、肥満など、特に熱中症を発症しやすい疾患のある人に対しては、産業医や主治医の意見を基に就業上の配慮をする。
表1 身体作業強度等に応じたWBGT基準値
代謝率区分 WBGT基準値(℃)
熱に順化している人 熱に順化していない人※1
安静 33 32
低代謝率:軽作業※2 30 29
中程度代謝率:中程度の作業※3 28 26
高代謝率:激しい作業※4 気流を感じないとき 気流を感じるとき 気流を感じないとき 気流を感じるとき
25 26 22 23
極高代謝率:極激しい作業※5 23 25 18 20
※1 作業する前の週に毎日熱にさらされていなかった人
※2 楽な座位、軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記)、手及び腕の作業(小さいペンチツール、点検、組立てや軽い材料の区分け)、腕と脚の作業(普通の状態での乗り物の運転、足のスイッチやペダルの操作)、立体ドリル(小さい部分)、フライス盤(小さい部分)、コイル巻き、小さい電気子巻き、小さい力の道具の機械、ちょっとした歩き(速さ3.5km/h)など。
※3 継続した頭と腕の作業(くぎ打ち、盛土)、腕と脚の作業(トラックのオフロード操縦、トラクター及び建設車両、腕と胴体の作業(空気ハンマーの作業、トラクター組立て、しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、草むしり、草堀り、果物や野菜を摘む)、軽量な荷車や手押し車を押したり引いたりする、3.5~5.5km/hの速さで歩く、鍛造など。
※4 強度の腕と胴体の作業、重い材料を運ぶ、シャベルを使う、大ハンマー作業、のこぎりをひく、硬い木にかんなをかけたりのみで彫る、草刈り、掘る、5.5~7km/hの速さで歩く、重い荷物の荷車や手押し車を押したり引いたりする、鋳物を削る、コンクリートブロックを積むなど。
※5 最大速度の速さでとても激しい活動、おのを振るう、激しくシャベルを使ったり掘ったりする、階段を登る、走る、7km/hより速く歩くなど。
表2 衣類の組合せによりWBGT値に加えるべき補正値
衣類の種類 WBGT値に加えるべき補正値(℃)
作業服(長袖シャツとズボン) 0
布(織物)製つなぎ服 0
二層の布(織物)製服 3
SMSポリプロピレン製つなぎ服 0.5
ポリオレフィン布製つなぎ服 1
限定用途の蒸気不浸透性つなぎ服 11
注 補正値は、一般にレベルAと呼ばれる完全な不浸透性防護服に使用してはならない。
また、重ね着の場合に、個々の補正値を加えて全体の補正値とすることはできない。
参照:職場における熱中症の予防について(平成21年6月19日付け基発第0619001号)

出典:厚生労働省 職場のあんぜん全サイト

 

熱中症対策

  1. 環境のコントロール
    スポットクーラー、ミストファン、送風機を設置
  2. 作業着での対策
    アイスベストの着用
  3. 水分・塩分補給
    スポーツドリンク、塩飴の手配・補給

摂取時のポイント
・喉の渇きがなくても、こまめに水分補給をおこなう
・コーヒーなどのカフェインを含むものは利尿作用によりかえって水分を排出してしまう

 

職場で水分・塩分を用意するのは義務となっています。

発汗作業に関する措置として労働安全衛生規則617条で、「多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない」と規定されています。

 

熱中症を発症した作業者に対して

熱中症が疑われた場合の応急処置は以下の通りになります。

  • 熱中症を疑う症状があるか
  • 呼びかけに応じるか → 応じなければ躊躇せず救急車を呼ぶ
  • 水分を自力で摂取できるか

出典:環境省 熱中症環境保健マニュアル

万が一の場合に慌てないよう、事前に把握しておくことが重要になります。

まとめ

  • 熱中症の死傷者数は増加傾向
  • 熱中症のリスクが高い時間帯は日中よりも夕方
  • 体が暑さに順化できていない初日に熱中症死亡災害が最も高く、初日から3日目までは特にリスクが高い
  • 熱中症の予防としては、WBGT値の把握・環境のコントロール・作業着での対策・水分・塩分補給
  • 職場で水分・塩分を用意するのは義務(労働安全衛生規則617条)
  • 熱中症が疑われた場合、慌てないよう、事前に対応手順を把握しておくことが重要
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